熊本電波高等専門学校講師・助教授(現在の准教授)、静岡大学教育学部准教授を経て、2012年より福岡工業大学工学部教授。博士(工学)。

【福岡工業大学 工学部 電子情報工学科 江口啓教授】工学に関する学びをインタビュー

福岡工業大学 工学部 電子情報工学科の江口啓教授に、専攻とされている工学を中心にインタビューを行いました。工学に関して学びを深めたいと考えている方や、江口啓教授と同じ学問を専攻としていきたい学生さんは、ぜひ最後までご覧ください。

江口啓教授のプロフィール

熊本電波高等専門学校講師・助教授(現在の准教授)、静岡大学教育学部准教授を経て、2012年より福岡工業大学工学部教授。博士(工学)。電子デバイス、電子機器、教育工学を専門。一般社団法人電気学会上級会員。国際学術団体Intelligent Networks and Systems Society(INASS)会長。国際学術誌International Journal of Intelligent Engineering and Systems編集長、国際学術誌International Journal of Innovative Computing, Information and Control共同編集者などを歴任。著書に『Simulation of Power Electronics Converters Using PLECS®』(Elsevier)、『Power Electronics Circuit Analysis with PSIM』(De Gruyter)、『例題で学ぶアナログ電子回路』(森北出版)などがある。

1. ご経歴と専攻分野

1999年、熊本大学大学院大学院博士後期課程を修了後、熊本電波高等専門学校(現在の熊本高専)情報工学科の講師として赴任し、非線形回路、エネルギー変換回路ならびに集積回路設計の研究を行いました。その後、静岡大学教育学部技術教育講座の准教授として赴任し、技術教育を担う教員・指導者の養成を行ってきました。

2012年に福岡工業大学工学部の教授となった後も、これらの研究を継続して行い、特に、高機能スマート・フォンやスマート・ウォッチなどの次世代モバイル機器開発の鍵となる、小型電源回路の設計を行っています。最近ではエネルギー変換回路を応用した、水中衝撃破を用いた非加熱食品加工の開発にも研究対象を広げています。

また、同大学では、カリフォルニア州立大学イーストベイ校への国外研修などを経て、2022年から大学院の工学研究科長に就任し、若手研究者の育成にも力を入れています。

2. 専攻分野を選んだきっかけ

私が電子デバイスや電子機器の分野に興味をもったキッカケは、大学の卒業研究における集積回路技術との出会いです。

皆さんは宇宙開発競争(スペースレース)というのをご存知ですか?

宇宙開発競争とは、20世紀後半にアメリカ合衆国とソビエト連邦(現在のロシア連邦)との間で宇宙開発をめぐって戦われた競争です。当時のアメリカのロケット技術は、ソビエトのロケット技術に大きく劣っており、世界で初めて人工衛星を飛ばしたのも、有人宇宙飛行に成功したのもソビエトです。しかし、ジャック・キルビーとロバート・ノイスという二人の天才が発明した集積回路技術によって、アメリカのロケットは飛躍的な進歩を遂げ、劇的な逆転勝利を果たします。

ご存知の通り、1969年にアポロ11号によって、アメリカ人が月面に足跡を残す最初の人類となりました。当時、大学生だった私は、1つの革新的な技術が歴史を動かしたこの出来事に衝撃を覚え、それ以来、回路設計の研究者としての道を志すようになりました。

3. 工学の主な実績

工学分野の業績としては、150件の国際学術論文、170件の国際会議プロシーディングスがあり、これまでに国際会議において14件の基調講演と4件の招待講演を行っています。

受賞歴としては、学術データベースWeb of Scienceにおいて、2019年にTop Peer Reviewer に選ばれており、2023年に世界最大の国際学術団体IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers:米国電気電子学会)から2022 Star Reviewer Awardと2022 Outstanding Reviewer Awardを受賞しています。また、国際会議においては、14件のBest Paper Award(優秀論文賞)、ならびに、15件のBest Presentation Award(優秀論文発表賞)を受賞しました。

一方、教育学分野の業績としては、静岡大学の附属学校における授業助言者や科学技術振興機構(JST)理数系教員指導力向上研修事業の講師を務め、技術・家庭科の技術分野の教科書(開隆堂出版:令和2年1月20日文部科学省検定)の作成にも携わりました。

4. 工学から日々の生活に活かせること

私の分野は電子デバイス、電子機器、教育工学と幅広いですが、これらの分野を研究していて良かったなと思うことは、教育学の視点に立って、工学の専門知識・技能を大学生や社会人だけでなく、中・高校生へお伝えできる機会を得たことです。これまで、大学だけでなく、中学・高校の模擬授業や夢ナビライブなどで自分の専門分野の話をする機会を多く頂くことができました。

これからの日本を背負って立つ方々の人生の一部に関わることができることは、私にとって大変な喜びであり、今後専門分野を研究する原動力となっています。

5. 工学に関心のある方へのアドバイス

日本が目指す次の超スマート社会Society 5.0においては、人工知能(AI)、Internet of Things(IoT)、ビッグデータ、ロボティクス等のイノベーションを、工学・情報学といった枠組みを超えた融合的視点から社会に実装できる研究者・技術者が求められています。

本分野に関心のある方は、当該分野の専門知識・技能を身につけると同時に、自分の専門分野を軸足にして、複数の分野に興味を持ち、分野横断的な学びによって融合的な視点と知識・技能を獲得することで、次世代の超スマート社会を築くために必要な「物事を科学的に思考・吟味し、活用する力」を身につけて下さい。

これからのVUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)時代を広い視野と柔軟な対応力で生き抜き、技術立国日本の発展に貢献してくれることを願っています。

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