東北大学経済学部(のち組織改編により大学院経済学研究科)助教授を経て、2005年から同教授。

【東北大学大学院経済学研究科 小田中直樹教授】経済史に関する学びをインタビュー

東北大学大学院経済学研究科の小田中直樹教授に、専攻とされている経済史に関するインタビューを行いました。経済史に関して学びを深めたいと考えている方や、小田中直樹教授と同じく経済史を専攻としていきたい学生さんは、ぜひ最後までご覧ください。

東北大学大学院経済学研究科 小田中直樹教授のプロフィール

東京大学社会科学研究所助手、東北大学経済学部(のち組織改編により大学院経済学研究科)助教授を経て、2005年から同教授。この間、レンヌ第2大学(フランス)訪問研究員・客員研究員、東京都立大学・愛知県立大学・富山大学・岡山大学・北海道大学非常勤講師、京都大学共同研究員などを歴任。博士(経済学、東京大学)。専門はフランス社会経済史(と、おまけとして歴史理論・歴史学方法論・史学史・歴史教育論などの歴史関連諸科学)。著書に『フランス近代社会1814-1852』(木鐸社)、『19世紀フランス社会政治史』(山川出版社)などがある。

1. ご経歴と専攻分野

研究者として、最初は東京大学社会科学研究所の助手(いまの助教ですね)からスタートしました。当時としては珍しい3年という任期付きのポストでしたが、研究だけしていればよいという夢のような時間でした。この間、レンヌ第2大学(フランス)で1年間訪問研究員を務めました。

2年9か月たったところで東北大学経済学部・大学院経済学研究科に助教授(いまの准教授ですね)として採用され、その後、教授に昇進して今日に至ります。学内では、2015年から20年まで副理事(学生支援担当)、2019年から21年まで副学部長・副研究科長、2022年から24年まで学部長・研究科長を務め、そして2024年4月からは附属図書館の副館長をしています。学外では、2017年から、レンヌ第2大学の客員研究員をしています。学内での教育については、学部では経済史や経済学史、大学院では社会思想史という科目名で、授業やゼミを担当しています。

研究に話をうつしましょうか。
ぼくの専門分野はフランス社会経済史です。具体的には、学部学生のころからずっと19世紀フランス農村部の社会経済構造やローカルなガバナンスのありかたを研究していました。

しかし、さすがに20年以上同じようなことをやっているのもどうかと思い、10年ほど前に、研究対象を第2次世界大戦後フランスの地方都市に変えました。都市化に伴って生じる様々な問題(都市問題)とそれに対応するためにとられる政策(都市政策)のありかたを、住民構成(もともと住んでいた人々、農村部からの流入者、移民など)との関係に着目しながら分析しています。

2. 専攻分野である経済史を選んだきっかけ

すごく消極的な理由でしたね。当時ぼくの大学では応募書類に「入学後の第2外国語」を書く欄があり、フランス語とドイツ語の違いもろくにわからない受験生だったぼくは「なんとなくカッコよさそう」という理由でフランス語を選びました。
入学したら、理論経済学には数学の知識が必要なことがわかり、数学オンチなので挫折して、あまり数学を使わなくてよかった社会経済史を選びました。

そんなわけで、学部3年生のときに「フランス社会経済史」のゼミに参加したわけです。

大学院では、ゼミの先生が2年間フランスに在外研究に出かけてしまったし、全国的に珍しい5年一貫制(つまり修士論文を書かなくてよい)の大学院だったので、文学研究科や農学研究科の授業を履修するなど、本当に自由な日々をすごしました。
そのなかで中木康夫『フランス政治史』(全3巻、未来社、1975-6)という本にめぐりあいました。これがツボにはまって徹夜で読み、そこから「19世紀農村部の社会経済構造やローカルなガバナンス」というテーマにたどりつきました。

3. 経済史の主な実績

19世紀フランス農村部については、レンヌ第2大学の訪問研究員時代にチェックした一次資料をもとに書いた博士論文を、1995年に『フランス近代社会1814-1852』(木鐸社)として出版しました。これは、おもに農村部の社会経済構造を分析しています。

その後、対象は変えずにテーマを「ローカルなガバナンス」に変えて研究を続け、2013年にとりまとめて『19世紀フランス社会政治史』(山川出版社)というタイトルで出版しました。

第2次世界大戦後フランスの地方都市の都市化・都市問題・都市政策に関する研究については、フランス語で書いて現地のローカル・ヒストリー(地方史)の学術雑誌に掲載しています。対象が「地方都市」なので、マイナーすぎて、日本語で書いたら読者は片手で足りてしまうんじゃないでしょうか。

4. 経済史から日々の生活に活かせること

自分の常識がひっくりかえされること――これが第1だと感じています。

ぼくらは普段、それと気づかずに常識に従って暮らしているわけですが、これは「ジャパン・ローカル」なものです。たとえばフランスに行ったら、かなりの部分は「なにそれ?」といわれるでしょう。

ましていわんや「19世紀フランス農村部」や「戦後フランス地方都市」という時空間で暮らす人々の常識は、「21世紀日本」に暮らすぼくらのものとはおおきく違います。

もちろん、それはそれで「フランス・ローカル」なものですから、おたがい「ローカル」なので、どちらかが正しいというわけではありません。世界は多様なんだと感じる機会になる、ということです。

5. 経済史に関心のある方へのアドバイス

まず大切なのは言語、ぼくの場合でいえばフランス語ですね。これはツールなので、「これさえあれば大丈夫」ではありませんが、ないと始まりません。また、近年は社会経済史も理論経済学のモデルを使ったりして、数学が必要になってきているので、数学アレルギーはなくしておいたほうがいいと思います(数学オンチのぼくがいうのもなんですが)。

ただし、なによりも大切なのは(良い意味での)コシの軽さと好奇心だと思っています。「えっなんで?」と思えるか否か、そして「ちょっと調べてみようかな」と腰を上げられるか否かによって、研究のヒントやチャンスをゲットできるか否かが決まりますから。

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