北海道医療大学 薬学部 薬剤学講座(製剤学)の柴山良彦教授に、専攻とされている薬学を中心にインタビューを行いました。薬学に関して学びを深めたいと考えている方や、柴山良彦教授と同じ学問を専攻としていきたい学生さんは、ぜひ最後までご覧ください。
柴山良彦教授のプロフィール
1969年鹿児島県生まれ。2004年鹿児島大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。九州大学薬学部、同大学院薬学研究科修了後、1996年から鹿児島大学病院で薬剤師業務に従事する傍ら、がんの薬剤耐性に関する研究を行ってきた。Case Western Reserve University研究員(2002-2003)、北海道大学薬学部准教授(2010-2015)を経て現職。日本臨床薬理学会指導薬剤師、日本医療薬学会指導薬剤師、がん指導薬剤師。
ご経歴と専攻分野
大学院修士課程を修了後、鹿児島大学病院にて薬剤師としてのキャリアをスタートさせました。臨床の現場での実務経験を積みながら、がん治療における薬剤耐性のメカニズムに興味を抱き、効果的で安全な治療法を追求することを目指しています。Case Western Reserve Universityでは、国際的な研究環境での経験を積み、グローバルな視点から問題に取り組む姿勢を身につけました。北海道大学薬学部での准教授時代には、教育と研究の両立を図り、多くの学生たちに専門知識と実践的なスキルを伝えました。病院での服薬指導の中で、多くの患者さんが壺づくり黒酢の健康効果を期待して摂取していました。この健康効果はどのようにもたらされるのかについて疑問に思い、分子機構に着目して研究を進めています。また、医療関係法規や保険診療など、社会薬学分野の問題にも取り組んでいます。
薬学を選んだきっかけ
大学と大学院修士課程では放射性医薬品に関する基礎研究を行っていましたが、患者さんに直接貢献したいと思い、薬剤師としてキャリアをスタートさせました。病院ではがん患者さんの調剤・服薬指導に従事しましたが、がんという不治の病に対する薬物治療の現状を目の当たりにし、患者一人ひとりに適した治療法の重要性を強く感じました。特に、薬剤耐性という難題に対する解決策を見出すことが、新しい治療法の開発に不可欠であると考え、この分野に研究を進めてきました。また、黒酢の健康効果に興味を持ち、その分子的メカニズムを解明することで、日常生活での健康管理にも役立てることができると考え、マウスを用いて壺づくり黒酢が遺伝子発現へ及ぼす影響を分析しています。
薬学の主な実績
抗がん薬に対する薬剤耐性機構の解明に関する研究は、多くの学術論文として発表され、国内外で高い評価を受けています。特に、がん細胞の耐性機構を分子レベルで解明することで、新たな治療戦略の提案に繋がる成果を上げました。また、壺づくり黒酢の健康効果に関する研究では、その分子的機能を明らかにし、健康食品としての黒酢の有用性を科学的に証明しました。これらの研究成果は、学会や専門誌に掲載されるだけでなく、一般の方々にも広く認知されるよう努めています。
薬学から日々の生活に活かせること
日々の生活で病気や怪我をしたときに薬は欠かせないものですが、薬や医療に関する知識は日常生活でも非常に役立っています。例えば、健康管理のための正しい薬の使用方法や、食生活の改善に関するアドバイスも身近な人々に提供することができます。臨床薬学とがんの分子生物学に関する研究を通じて得た問題解決能力や論理的思考力は、日常のさまざまな場面で応用できるスキルとなっています。薬事関係法規などを学習することで法的問題について理解を高めることができました。法的知識は日常の生活に非常に重要な示唆を与えてくれます。薬に限らず、様々な専門分野を学び続けることで、新しい情報や技術に対する柔軟な対応力が養われ、自己成長にも繋がっています。
薬学に関心のある方へのアドバイス
学生の皆さんには、まず自分の興味や関心を大切にすることをお勧めします。どの専攻分野も習得するには努力や困難が伴いますが、他に強制されるのではなく、自分自身が興味・関心を持っているということが学ぶための原動力です。研究や学びは、情熱を持って取り組むことでより深い理解と成果を得ることができ、人間を成長させてくれます。薬学に関しては、様々な医療専門職の中で、化学に特化した専門職であり、医療に併せて化学に関心の高い学生に向いている分野と思います。また、学問の壁を越えて、さまざまな分野に触れることも重要です。異なる視点や知識を取り入れることで、自分の専門分野にも新たな発見や発展の機会が生まれます。薬学は薬という物質を扱う科学ですが、それを使うのは人です。家族や先生、友人、多くの人々とのかかわりは薬学に限らず、皆さんの人生を豊かにしてくれるでしょう。実践的な経験を積むために、インターンシップやボランティア活動に積極的に参加することも貴重な経験になると思います。最後に、失敗を恐れず挑戦し続けることが、成長と成功への鍵となるでしょう。