【金城学院大学 人間科学部 多元心理学科 加藤大樹教授】心理学に関する学びをインタビュー

金城学院大学 人間科学部 多元心理学科 加藤大樹教授に、専攻とされている心理学を中心にインタビューを行いました。心理学に関して学びを深めたいと考えている方や、加藤大樹教授と同じ学問を専攻としていきたい学生さんは、ぜひ最後までご覧ください。

加藤大樹教授のご経歴と専攻分野

名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士課程後期課程修了。博士(心理学)。日本学術振興会特別研究員、名古屋大学学生相談総合センター特任助教、金城学院大学人間科学部講師、准教授を経て、2021年より現職。専門は臨床心理学。芸術療法や心理的アセスメントに関する基礎的研究に従事。近年は、私たちが生活の中で感じる役割満足感をあらわす「ロールフルネス」という新しい分野の研究に取り組んでいる。

心理学を選んだきっかけ

大学に進学した時には、やりたいことがたくさんあって1つに絞ることができませんでした。子どもたちと関わることや何かを伝えていくことが好きだったので、学校の先生は憧れの職業の1つでした。また、当時はまだ現在ほど制度が整っていませんでしたが、心理カウンセラーの仕事にも関心がありました。結局、自分にやりたいことに向き合ってじっくり考えることができる進路として教育学部を選びました。教育実習でたくさんの生徒たちと出会い、大学院でカウンセラーになるための勉強をする中で、もっと勉強や研究を続けたいという気持ちが強くなりました。その延長線上に今の自分の仕事があります。結果的に、自分の興味のある研究を続け、学生のみなさんに伝え、またカウンセラーとしても社会と関わることができ、当時の自分のやりたかったことがすべて詰まっていて、とても幸せなことだと感じています。

心理学の主な実績

大学院生の時から現在まで、ライフワークとして続けている研究の1つに、アートセラピーの研究があります。特に、私たちにとって身近なレゴブロックを表現の手段として活用し、子どもから大人まですべての人を対象に、心の問題のケアや対人関係づくりの方法を研究しています。

最近は、「ロールフルネス」という新しい研究テーマにチャレンジしています。ロールフルネスとは、私たちが毎日の生活の中で、自分の役割を通して感じる満足感のことをあらわす心理学的概念です。まわりとの「和」を大切にすることは、日本の文化と親和性が高いですが、ロールフルネスは海外の研究者や実践家のみなさんからもとても注目していただいています。学術論文の発表はもちろんですが、ワークシートの開発、書籍の刊行、ポッドキャストの配信など、社会に向けてわかりやすく研究成果を伝えていく活動を行っています。

https://rolefulness.com/

2025年には、「ロールフルネス 役割満足感の心理学」(ナカニシヤ出版)が刊行予定です。ぜひ多くのみなさんに読んでいただけると嬉しいです。

心理学から日々の生活に活かせること

心理学を専攻してよかったと思えたことは、自分の人生や周りの世界の見え方が大きく変わったことです。私たちは自分のものさしで、つい狭いエリアだけを見てしまいがちです。しかし、心理学を勉強することで自分や他人の気持ちや考えへの興味や関心が広がり、いろいろなものの見方や感じ方を身につけることができ、人生が豊かになっていくのを実感しています。

現代の研究者は、多くの人とつながり、自分の研究を「伝える」ことがとても大切です。私の研究室でも日々新しい挑戦をしていますが、ポッドキャストでの情報発信もその1つです。

「Psychology in Daily Life」(英語版)

「伝える心理学」(日本語版)

以上の2つの番組で研究の魅力を伝えていますのでぜひお聴きください。

子どものころから物語を読んだり書いたりするのが好きで、心理学者の他には小説家になるのが夢でした。大人になってからもコツコツと作品を書き続けて、「約束」という掌編小説で2022年度コトノハなごや金賞を受賞しました。

現在、金城学院大学公式note「Kinjo Knowledge」内で、大学を舞台にした連載小説を執筆しています。https://knowledge.kinjo-gakuin.jp/m/m3897482d19b3

小説の執筆と心理学は一見関係のないことのように見えますが、登場人物たちの心に寄り添うこと、言葉を使って気持ちを伝えることは心理学がいちばん大切にしていることの1つです。自分の関心や強みをつなげて形にしていけること、これも心理学を学んでいてよかったと思えることです。


心理学に関心のある方へのアドバイス

私たちの心は、はっきりとした形や唯一の正解があるものではなく、とてもあいまいな存在です。どれだけ研究しても、きっと完全に解明されることはなく、どんどん新しい謎が出てきます。一方で、心は誰もが自分の中にもっていて、とても身近な存在です。心理学を勉強することは、自分を知ることにもつながります。高校生のみなさんから、「心理学を勉強するとどんな役に立ちますか?」とよく質問を受けます。私が自信をもって言えるのは、「心理学は私たちの人生を豊かにしてくれます」ということです。ワクワクがいっぱいの心理学の世界を一緒に探検してみませんか?

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