【北海道科学大学 工学部 情報工学科 松崎博季教授】工学に関する学びをインタビュー

北海道科学大学 工学部 情報工学科の松崎博季教授に、専攻とされている工学を中心にインタビューを行いました。工学に関して学びを深めたいと考えている方や、松崎博季教授と同じ学問を専攻としていきたい学生さんは、ぜひ最後までご覧ください。

松崎博季教授のプロフィール

1997年北海道大学大学院工学研究科電子工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。NTTアドバンステクノロジ株式会社で音声生成機構の研究の従事を経て、1998年北海学園大学工学部助手、2008年から北海道工業大学(現北海道科学大学)工学部講師、准教授、2014年より北海道科学大学工学部教授。電子情報通信学会、日本音響学会、米国音響学会、音声言語医学学会、「野生生物と社会」学会各会員。

ご経歴と専攻分野

北海道大学工学部電子工学科在学時に卒業研究で音声に関する研究に携わるようになり、現在も音声・音響工学、音声情報処理に関する研究に従事しています。NTTアドバンステクノロジ株式会社在籍時は、NTT基礎研究所で発話時の舌の調音運動を模擬する研究に取り組んでいました。2014年に、鹿と車両の交通事故防止のための鹿よけ警笛を輸入販売する会社様から警笛の音響特性を調べてほしいとの依頼を受けたのをきっかけに、音で鹿と車両の衝突防止を行う車載スピーカーシステムの研究・開発に取り組み始めました。

工学を選んだきっかけ

学部時代に電子回路についてさらに学びたいと考えていたことと、趣味のエレキギター演奏で音に関心を持っていたことから、電子回路と音声の研究を行なっていた北海道大学応用電気研究所電子回路部門を配属先に選びました。師事した先生が音声の研究を行なっていたのがきっかけで、音声に関する研究に携わるようになりました。研究室では大型計算機を使用した大規模計算を伴う研究が行われ始めており、卒業研究のテーマとして、有限要素法(Finite Element Method, FEM)というコンピュータ・シミュレーション手法で音声生成過程を模擬する研究を与えていただきました。研究室所属時はまだ珍しかった、3次元空間での音波伝搬シミュレーションや計算結果の可視化を行なっていました。近年は機械学習を用いた音声研究も行なっています。

工学の主な実績

発声過程を模擬するためには口の中の形(声道形状)が必要です。声道形状の取得には磁気共鳴映像法(Magnetic Resonance Imaging, MRI)という手法で体の断層画像を撮像する機器を使います。MRIは非侵襲で、CTのように被爆する恐れがないので音声の研究ではよく利用されています。下図は撮像された画像の一例です。

このような2次元断層画像を、声道全体をカバーするように複数枚撮像し、立体化するソフトウェアを使用して合成することで3次元の声道形状モデルを作成します。下図は3次元化した声道形状モデルの一例です。

この声道形状モデルを用いてFEMでシミュレーションを行なった結果の一例を下図に示します。この図は声道内の音のエネルギー流をベクトルで表示したものです。色の違いでエネルギー流の大きさを表現しています。この図のように、いままで目にすることが難しかった音の伝わる様子を視覚化することで、声道のどの部位が音を特徴付けているのかを推察することができます。このような研究成果を生かして、まるで人間が話していかのようにコンピュータに喋らせることや、医療分野との連携を目指して研究を進めています。

音による鹿と車両の事故防止に関する研究については、北海道でエゾシカが関係する交通事故が急増していることもあり、北海道のテレビや新聞に取り上げていただいています。

卒業研究で関連研究に取り組んだ学生達が、イベントで優秀賞を受賞したこともあります。

工学から日々の生活に活かせること

音声・音響工学、音声情報処理を専門として大学で関連授業の担当や卒業研究の指導を行う他、児童から高校生までを対象とした音に関する出前講義を行なっています。地域社会の皆様から、音に関する相談や質問をいただくこともあり、解決につながった時は嬉しく、またやりがいを感じます。音による鹿と車両の衝突防止に関する研究が縁で、畑作の鳥獣害対策事業に取り組んでおられる幾つかの企業様にお声がけいただき、音の専門家として事業に参加させていただいています。

工学に関心のある方へのアドバイス

音、画像や映像などの情報処理や機械学習を行なってみたいと考えている皆さんは、論理的思考を鍛えておくとよろしいでしょう。プログラミング能力も必要となります。

何事も、新しい知識や技術を得ることには喜びがある一方、困難さが伴い習得が容易ではないこともあります。困難さを感じたときに、それを乗り越えるためにどのように、またどのような行動を行うのかが、自身の成長を大きく左右します。このような状況に遭遇したら、成長のチャンスと捉えて前向きに行動してもらえればと思います。

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